去年の2月12日から開始した断酒生活。無事一年が経ちました。

当初危惧したほどのアルコール依存はなかったらしく、飲酒欲求に悩まされるということはありませんでした。

でも暑い夏の日にビールのCMを観たり、冬に鍋物で一杯というCMを観ると、何か少し惨めな気分になったりしましたね。

でもその程度で済みました。

断酒生活について、ネットの情報を探すと、決まって劇的な変化が訪れるような記述が目立ちますが、僕の場合変化は物凄く鈍重でした。

まず運動習慣がなかなか身に付かなかったです。ネットでは筋トレを推奨しているのですが、僕はどうも筋トレが好きではなく、続かなかったですね。筋トレに打ち込むには、ある程度ナルシストの資質が必要だと思います。

続いてウォーキングマシンを使って室内ウォーキングをやってみましたが、これも続きません。単純に歩くという行為に飽き飽きしてきて、ビデオを観たり手話学習を兼ねたりと、工夫をしてみたのですが、ウォーキング自体に楽しみを見出すことはありませんでした。

11月の半ばあたりから、健診結果が良くなかったこともあって、自転車で近所の坂を走るという運動を始めました。この運動は誰から勧められたわけでもなく、単に気が向いたからやってみたんですが、面白いことにそれから嬉々として乗り続けています。自転車は好きらしいです。でも僅か10分足らずの運動ですから、効果のほどは怪しいものです。

そういう状況にもやがて転機が訪れます。それは何の前触れもなく、唐突に訪れました。

朝出勤して、ロッカールームでユニフォームに着替え、薄暗い無人の廊下を歩いていると、自然と駆け足になり、気が付くと全力疾走していました。

重い体躯がジャンボ機のように浮遊し、微かな高揚感を覚えました。

何故、いきなり駆け出したのか、その時は不思議に思いましたが、今なら説明が付きます。まだ完全にではないにしろ、長い断酒生活で身体が健康を取り戻していたのです。自転車で下肢が鍛えられたせいもあると思います。

やがてクリスマスを迎えます。自転車以外は大した運動もせずダラダラと過ごしていましたが、断酒中の呑兵衛にとって、この時期は鬼門です。再飲酒(スリップ)の危険が高まる時期です。折しも僕は運動不足から血糖コントロールが良くない状態でした。過食も出来ない。クリスマスケーキもお餅もフライドチキンもポテチも全部ダメ。

クリスマスの朝、意を決してジョギングを始めました。家の周囲700mばかりの距離を走るだけでしたが、これがかなりきつかった。でも凄い達成感があります。筋トレにもウォーキングにも、達成感が足りなかった。

それから僕は肥満者のランニングについて調べてみました。肥満者がランニングすることについて、概ね否定的な意見が多く、なかなか情報が集まりませんでした。

でも僅かに得ることが出来た情報によると、とにかく走るペースを落とすこと、リカバリの時間を多く取ること、少しずつ走れる距離を延ばすこと、この三つが大切だということが分かりました。

これらは肥満者に特化した情報とは言えないかもしれませんが、僕にとっては貴重なアドバイスでした。

僕は意識せずに放っておいても走るペースが速いです。むしろペースを抑えたり落とすほうに意識を集中すべきなんです。

さらに僕は勤勉なのかどうしても愚直に毎日やろうとする。毎日コンスタントに続けることを良しとする信条が災いして、自滅するパターンが多いです。つまり一回でもサボったらそこでアウトって感じですね。

でも一週間に3回というアドバイスに従ってみると、あぁ毎日やるというのは間違っていたなぁと気付かされます。ジョグを一日おきにやっていると、ジョグを休んでいる間に、様々な痛みや違和感が下肢を駆け巡ることが分かります。それらは一過性ですぐに消失しますが、踵の痛みが治まったら、今度は右膝、そして太腿というふうに、まるであちこちメンテナンスを行っているように修復が行われていくんです。

僕はこれまでそうした機序をさっぱり無視して、毎日トライしていたわけで、これでは挫折や故障をしないほうがおかしいです。

三つ目の「少しずつ距離を延ばす」ですが、これも僕には上手く出来ないことのひとつです。やはり見栄坊なんでしょうか、走れる人が5キロとか10キロとか言っているのを聞いて、それぐらい走れて当然なんだ、とそこに基準を置いてしまい、物凄い高いハードルを乗り越えようとする。所詮無謀なんですよ。

わずか100mを数週間かけてモノにしていくことを、僕は心底馬鹿にしていて、そういう態度がこれまで色んなことを投げ出す原因になっていたんじゃないかな。この年齢にしてこんなことに気付いても手遅れ感しかないわけですけど。

まぁ、良い。

さて、運動習慣についてはこれで切り上げるとして、他に断酒一年で変化があったことといえば、まず人間関係でしょうかね。

妻ともいさかいがほとんどないし、職場でも同様。ただ職場での人間関係では、付き合う人がちょっと変わってきたかなぁ、と思います。

以前は酒やギャンブルが好きという豪胆な人物と親しかったのですが、今は健康オタクの人とよく話をします。断酒期間が長くなるにつれて、体を動かすことが嫌でなくなり、自分から進んで重い荷物を運んだりしてますので、その辺でも好感度を稼いているのかな。

手話学習に関してですが、お恥ずかしい話ですが、実は今ほとんどやっていないんですよ。手話検定には申し込んだんですが、コロナ感染を危惧して先日ネット受験に切り替えました。でも勉強は手につかずですね。今は運動に没頭しているからかなぁと思っています。

それと最近、小説か童話を書いてみようかなぁ、と思うことがあります。アルコール漬けで枯渇していた創作意欲が少し湧いてきたんでしょうか。でもこちらもまだ手付かずですし、何を書きたいかも定かではないです。

何かこう、文化的な欲求はまだぼんやりしている感じです。観たい映画は「シン・ウルトラマン」ぐらいですかね。あとは特にないな。音楽も聴かないし、今はコロナでカラオケも行きませんし、読書もしない。とにかくぼんやりしてます。

断酒を抜きに考えても、皆そうなんじゃないですかね。

さて断酒二年を目指して、頑張りますか。