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役に立たない日常

役に立たない日常

木曜日から入院を控えている。

とはいえ、今のところ体調はそれほど悪くない。少し胸焼けのような違和感がある程度で、普通に歩けるし、こうしてウォーキングをしながら音声入力までできている。

この文章も、日曜日の深夜二時過ぎに録音したものだ。

本来なら仕事で夜勤をしてる時間帯なのだが、入院前ということもあり、最近は日勤のみの生活リズムになっている。昼夜が少しずれているけれど、それほど苦ではない。

空いた時間は、ほとんど「ドラゴンクエスト10オンライン」をやっている。

気が付けばレベル100を突破していた。

ドラクエ10を遊んだことがある人なら分かると思うけれど、レベル100まで上げるのは、それなりに時間を使わないと到達できない。僕の場合、一度ゲームを始めると熱中しすぎるところがあって、気付けば体がぐったりするまで続けてしまう。

正直、健康にはあまり良くない遊び方かもしれない。

しかも、レベル100になったからといって楽になるわけではない。敵もかなり強くなってきていて、ボス戦では五回ぐらい全滅して、ようやく勝てることも珍しくない。

それでも、つい続けてしまう。

「こんなにゲームばかりしていていいのかな」という後ろめたさはある。でも、それ以上に楽しい気持ちの方が勝ってしまうのだろう。

レベリングには、ツスクル平野で行うことが多い。ここではスライムとナスビナーラしか出てこない。

2時間半ごとに、メタル系モンスターを放つバーゲンが行われるので、その度にここへ駆けつける。

毎回、同じプレイヤーがやってくる。会うたびに、見た目が変わっているのだけど、戦い方で判る。

僕は徹頭徹尾派手さの無い駆け足でエンカウントするタコ殴りタイプだが、ドルボードという電動キックボードみたいな乗り物でエンカウントする人、魔物にまたがってエンカウントする人など、大体見分けがつく。

ドルボードの人は、見かける度に改造を繰り返していて、サーフボードに乗ってたり、オープンカーに乗ってたり、結構見てて面白い。

夜中の二時三時に、お馴染みのメンツでツスクルの原っぱを駆け回っていると、妙な親近感を抱きます。

日本の夜の片隅に、似たようなバカがいるもんだ、と思って。

今はまだ無料版を遊んでいる最中だが、6月25日にはバージョン1〜8まで入った製品版が発売されるらしい。それまでには、せめて無料版でバージョン4後半ぐらいまでは進めておきたいと思っている。

製品版購入後に、これらのデータは引き継ぐことが出来る。

まだ手に入っていない便利アイテムもある。条件を満たすと入手できるらしく、それが取れれば冒険はもっと快適になるはずだ。

一方で、「友達コレクション わくわく生活」も遊んでいる。

こちらはすでに六十人ぐらいキャラクターを投入した。

ただ、正直なところ、このゲームがどこへ向かっているのか、まだよく分からない。

どうやら僕は、問題解決型の人間らしい。

キャラクター同士の恋愛や人間関係そのものには、あまり強い興味がない。むしろ、「お腹が空いた」「新しい服が欲しい」「部屋を模様替えしたい」といった悩みを一つずつ解決していくタスクを仕方なくこなしている。

困っている人がいたら助ける。例えば、道端で硬直して動けなくなっているキャラクターがいれば、助けてくれる別の人を連れていく。

そんなふうに、目の前の問題を処理していく遊び方だ。

後で知ったのだが、このゲームは、めちゃくちゃなギャグっぽいゲームというより、「コツコツ型のコミュニティシミュレーション」に近いらしい。キャラクターを増やし、悩みを解決し続けることで、少しずつ町が発展していくゲームなのだという。

このゲームをやっていると、つくづく思う。

「役に立たない日常」は、とても快適だ。

仕事のストレスから解放され、ただ好きなことをして過ごす時間。これが案外悪くない。

62歳にもなると、「そろそろ引退」という言葉も現実味を帯びてくる。

以前は、「仕事のない日常なんて退屈だろう」と思っていた。でも実際には、そんなことはなかった。

妻と二人、同じ家の中で気ままに過ごしている。

僕はゲームをして、妻もゲームをする。猫の世話をしたり、買い物へ行ったりする。ただそれだけの日常なのだが、不思議と穏やかだ。

もちろん、不安がないわけではない。

来週の木曜日からはいよいよ入院だ。

医師からは「三泊四日くらい」と説明されている。でも、本当にそれだけで済むのかという不安は、やはり心のどこかにある。

それでも今は、こうして歩けている。

夜の坂道を息切れもなく歩きながら、ゲームのことや、これからの暮らしのことを考えている。そんな時間が、少しだけ愛おしく感じられる。

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