ある日、嫁が発作的に僕の部屋へやってきて、ダンボール箱を床に放り出して、仁王立ちで言い放ちました。

「猫を二匹貰ってくる」

僕は面食らいながら「猫って、あんた、今度は犬を飼うって言ってたじゃん」と言うと

「犬は散歩が大変だもん」と、当たり前な答えが帰ってきた。

「どっから貰うんだよ」

「動物愛護センター」

特に異議はないので黙っていると、一旦目前から消え去り、タブレットを手にしてまたやってきた。

「ほら、こんなのだよ。とても仲が良いってさ」

白とグレーのツートーンの猫と、ヒョロっとした猫がいる。まぁ、仲良く見えないこともない。

「これ、黒猫じゃん?」

僕は古い人間なので、黒猫には拒絶反応がある。妻は黒猫は誰とでも仲良く出来るから飼ったほう良いという。

あまりにも妻が黒猫を擁護するので、もしかしたらこっち(黒猫)が本命かな?とにぶい私でも考えてしまいます。

でも何で黒猫を飼いたい?

随分考えて、妻がジブリファンであることに行き着きました。やっと腑に落ちた。

「なーるほど、ジジかぁ」

痩せて大きな眼がこっちを見ている。どうやら「魔女の宅急便」に出てるキャラに似てるらしい。

了解すると、彼女は愛護センターに連絡し、2匹を引き取る手続きを進めた。

すぐ連れてくるのかと思ったら、もう少し大きくなってから引き取りたい、とセンターに掛け合い、3月まで預かってもらうことにしたのだそうだ。

ん?何かおかしい。

たぶん我が家は冬は寒いので、仔猫のうちは辛いだろうから、と思ったんだろう。

でも、普通そんなこと言うかなぁ。

1週間経ち、嫁に訊いてみました。

「本当にあの2匹は、ウチに来るんだろうか?」

彼女は小さく首を振りました。結局、断ったのだそうです。

僕自身もあの2匹は違うな、と思っていたので、少しホッとしました。

次の出会いに期待しましょう。