10月4日日曜日の空腹時血糖値は110mg/dlでした。

本題に入る前に、採血結果を載せときましょ。

さて、ここから本文です。先日読んだ「ユートロニカのこちら側」の感想を。著者は小川哲さん。
サンフランシスコの特別区、アガスティアリゾートを巡るSFらしくないSF小説。ハヤカワSFコンテストの大賞受賞作です。
簡単に設定を述べると、このアガスティアリゾートで暮らすためには、マイン社の審査や抽選にパスする必要があり、身辺の情報をカメラやデバイスで搾取される。その代わり入居後は仕事をせずとも、入居前と同等の収入を保証される、というもの。
犯罪者·テロの流入は阻止され、平和的な暮らしが約束された楽園。
であるはず、なんですが、中の人間たちが少しずつ狂い始める。
いや、全部が全部そうではなく、大勢の「愚鈍」な人間にとってはユートピアなんですが、ある種の「繊細」な人間にとっては、ディストピアであるわけです。
物語は熱烈なアガスティア信奉者の妻に従ってやってきた夫ジョンが、次第に閉じこもりとなった話から始まります。彼はサナトリウムのドクターに「背後霊」がいる、と告白。入院となります。そこで旧友と再会し、友人は建物の四階から投身します。
ジョンは、自分が友人に背後霊の存在を教えてしまったから、あんなことになったんだ、と担当医に漏らし、退院後も妻におかしな詰問を繰り返し呆れさせます。
と、まぁこんな感じの「壊れた人間」の話がいくつも続きます。
残酷さも凄惨さもないわりには、何となく気を滅入らせる短編の連作という感じの作品。
これはまぁ、僕の感想なので、本来の評価とは違うかもしれません。
ただ、終盤に妻に逃げられた牧師がこんなことをつぶやく場面があったんですよ。
「このごろ、色々なことがわからなくなっている」
……これはまさしく俺だな、と思ったわけですよ。
苦笑しました。
小説を書いて、Kindleを出して、漫画まで描き始めて、やめると言ったくせにまた描いている。
何かひとつ終わると、すぐ次の何かを始める。
自分はいったい何をそんなに急いでいるんだろう、と自分でも思う。
結果が欲しいのかもしれない。
何かを残したいのかもしれない。
ただ単に、止まるのが怖いだけなのかもしれない。
生き急いでいるのかな?
でも、分からないものは分からない。
この牧師も、たぶん昔なら、自分が何をすべきか分かっていた人なんでしょう。
ところが色々なものを失って、間違えて、後悔して、とうとう「分からない」と口にする。
それを読んだとき、妙にホッとしたんですよね。
ああ、分からなくてもいいのか、と。
六十年以上も生きてきたからといって、何もかも分かるようになるわけじゃない。
むしろ昔より分からないことが増えている気さえする。
自分が何をしたいのか。
何を書きたいのか。
これからどうしたいのか。
『ニュートロニカのこちら側』は、読んでいて楽しい小説だったかと訊かれると、ちょっと返事に困ります。
人が少しずつ壊れていく話ですからね。
でも、読み終わったあと、不思議と気分は落ち着いていました。
ユートピアの話を読んで元気になったわけでもない。
何かの答えをもらったわけでもない。
ただ、
「このごろ、色々なことがわからなくなっている」
そう言っている人間が、小説の中にもいた。
それだけで、今日は十分だったような気がします。